死の意味

evolution

 

死というものについて遺伝子や生き物の進化といった生物学の視点から紐解いている東京大学教授である小林 武彦先生の著書『生物はなぜ死ぬのか』は2021年4月に出版され、10万部以上の売上となっています。

無数の死があるから進化し、私たちが存在する

死についての考え方が変わった一冊となりました。

生物は進化がつくった

小林先生は生物の老化や死についてを専門に主にパンやワインを発酵させる酵母菌の研究されています。実は酵母菌は人の老化とよく似た仕組みをしているそうなのです。酵母菌のある遺伝子が壊れると寿命が伸びるということを小林先生は発見されています。つまり、この壊れた遺伝子が寿命を決めているということらしです。遺伝子レベルで寿命が組み込まれているということは死ぬことが前提とした設計となっているということですから驚きました。私たした偶然のタイミングで生をまっとうして死ぬのではなく、あらかじめ寿命コントロールされているということなんですね。小林先生の研究によると、この寿命を決めている遺伝子を壊すと人でいったら80歳の寿命が120歳相当になると見込まれているとのことです。いろいろな生物にこのような寿命を制限している遺伝子が存在することが最近の研究でわかってきたそうです。そこに私たちはなんで寿命があるのか、なぜ死ななければいけないのかという理由が隠されいると小林先生をおっしゃっています。

生物が進化したり、生態系を維持したりするのには死が欠かせず、進化は運がいいモノが生き延びた結果であると小林先生は考えています。遺伝情報が変わること姿カタチが変わるなど変化することと偶然や都合などによって選択されることによって生き残るヤツがいる一方、生き残れなかった死んだヤツは分解して材料になる、この変化と選択を常に繰り返すことによって都合のいいカタチや性質をもったモノが生き残ってきた結果、われわれが存在する、死があったからわれわれが存在するというのです。

死は人生のゴール!?

人間は知性があるだけに他の生物より死を恐れるそうです。

一人一人の個人では人生の終わりですが死が次の世代のためだったり、あるいは別の生物のためだったり、いろんな生き物のためになっているということなので死はすごく重要な意味があると頭で理解できたとしてもそれを受け入れるのが難しですよね。

大自然な大きなサイクルの中に死が組み込まれていると考えるとどんな人生となったとしても死ぬことで生きた価値を全うできると少し気が楽になった感じがします。一度きりの人生、失敗や挫折を恐れず、チャレンジし続け、何があっても自ら死ぬという間違った選択はせず、遺伝子に組み込まれた大きな自然に意図に従って未来へ何かしらをバトンタッチしたいですね。

参考 生物はなぜ死ぬのか 小林 武彦

【死生観が一変する〈現代人のための生物学入門〉!】
生命の死には、重要な意味がある。
遺伝子に組み込まれた「死のプログラム」とは?

なぜ、私たちは“死ななければならない”のでしょうか?

年を重ねるにつれて体力は少しずつ衰え、肉体や心が徐々に変化していきます。
やむを得ないことだとわかっていても、老化は死へ一歩ずつ近づいているサインであり、私たちにとって「死」は、絶対的な恐るべきものとして存在しています。
しかし、生物学の視点から見ると、すべての生き物、つまり私たち人間が死ぬことにも「重要な意味」があるのです。
その意味とはいったい何なのか――「死」に意味があるならば、老化に抗うことは自然の摂理に反する冒涜となるのでしょうか。
そして、人類が生み出した“死なないAI”と“死ぬべき人類”は、これからどのように付き合っていくべきなのでしょうか。

■主な内容
・恐竜が絶滅してくれたおかげで、哺乳類の時代が訪れた
・宇宙人から見た「地球の素晴らしさ」とは
・地球上で最も進化した生物は昆虫である
・遺伝物質DNAとRNAの絶妙な関係
・「死」も、進化が作った仕組みである
・ヒトだけが死を恐れる理由
・“若返る”ベニクラゲの不思議
・超長寿のハダカデバネズミは、なぜがんにならないか
・ヒトの老化スピードが遅くなっている理由とは?
・「若返り薬」の実現性
・少なめの食事で長生きできる理由
・老化細胞は“毒”をばらまく
・テロメアの長さと老化は関係ない?
・生物学的に見ると、子供が親よりも「優秀」なワケ
・ヒトが生きる目的は、子孫を残すことだけではない
・“死なないAI”を生み出してしまったヒトの未来
・有限の命を持つからこそ、「生きる価値」を共有できる
・私たちは、次の世代のために死ななければならない
――すべての生き物は「死ぬため」に生まれてくる。

第1章 そもそも生物はなぜ誕生したのか
第2章 そもそも生物はなぜ絶滅するのか
第3章 そもそも生物はどのように死ぬのか
第4章 そもそもヒトはどのように死ぬのか
第5章 そもそも生物はなぜ死ぬのか

モバイルバージョンを終了