トヨタが乗り遅れたEV(電気自動車)の実情

自動車

トヨタはEV(電気自動車)の波に乗り遅れた!?

2023年8月に公開されたトヨタ自動車の4-6月連結決算では売上高、営業利益、純利益のいずれも過去最高益を更新しました。四半期の営業利益としては日本企業としては1兆円をはじめて超えたと話題となりました。そんな絶好調のトヨタですが、EV(電気自動車)の波に乗り遅れて周回遅れ、オワコンとマスコミ等で囁かれて久しいです。

BIGMOTORの一件ではCMスポンサーである間は報道を控えていたマスコミ、ジャニーズ事務所の性加害問題については長年に渡ってスルーしてきた挙げ句、最近では記者会見などを批判的に報道しているマスコミの言う「トヨタはオワコン」は本当なのでしょうか?

トヨタの実力は?

2023年6月にトヨタは静岡県裾野市の東富士研究所で「トヨタ テクニカル ワークショップ2023」というマスコミ向けの発表会を開催しました。「いまトヨタが持っている技術の90%はお見せします」と意気込んだトヨタは次世代のバッテリー技術を見せつけました。

EV(電気自動車)の覇権を握れるかどうかはバッテリー技術のブレイクスルーをどの会社が達成するかが鍵だと言われています。

トヨタは技術的には非常に難しい「全固体電池」の開発に取り組んでいます。

2026年に導入される次世代EV(電気自動車)に搭載する次世代型リチウムイオン電池で航続距離1,000kmから1,200kmの実現を目指すと発表しています。

現在のバッテリー技術

EV(電気自動車)だけではなく、現在、世の中のバッテリーはリチウムイオン二次電池(LIB)が世界標準になっています。スマホにも利用されているバッテリーです。このリチウムイオン二次電池(LIB)の重量エネルギー密度を超える電池を開発できるかが勝負になっています。

車載用バッテリーの世界シェアは中国のBYDとCATLとで約半分を握っている状況です。BYDは自らがEV(電気自動車)を生産・販売する一方でテスラにも車載用バッテリーモジュールを提供しています。世界のEV化潮流は中国の思惑通りです。

リチウムイオン電池の原料の一つであるコバルトはコンゴ(中部アフリカ)で80%産出されています。しかし、その多くは人権無視の児童労働で生産されている実態のようです。

トヨタの全方位戦略

EV(電気自動車)を世界中のどの国でも買えるようになる時代は訪れるのでしょうか?トヨタは水素自動車の開発にも取り組んできました。これまで培ってきたエンジン技術とサプライ・チェーンを維持し、ガソリンに変わって水素を燃料とする自動車です。ガソリンと違って走行中に二酸化炭素をほぼ排出しないクリーンな自動車です。

部品数も圧倒的に少なく、より簡単に生産できるEV(電気自動車)だとサプライ・チェーン広範囲にわたる雇用が維持できなくなります。

ヨーロッパを中心にカーボンニュートラルを目指してEV(電気自動車)へのシフトが叫ばれましたが、自動車産業だけではカーボンニュートラルは達成できません。

トヨタはEV(電気自動車)を所有、維持できるのは富裕層(人・国)に限定されるので、発展途上国を含む、どの国の人でも移動の自由を確保するために全ての選択肢を残すというのがトヨタの全方位戦略です。

EV(電気自動車)のカーボンニュートラル貢献度は低い!?

EV(電気自動車)が走行すると二酸化炭素が排出されないのは事実です。しかし、原材料の生産や輸送、部材の製造、組み立てから販売、走行、そして役目を終えて処分されるに至るまでの全ての過程でどれだけ二酸化炭素が排出されているかを評価するライフサイクルアセスメントという環境影響評価やバッテリーの材料となる鉱物資源を採掘する際の地下水の大規模汚染やバッテリーの廃棄による環境破壊を考慮するとEV(電気自動車)が必ずしも地球環境に優しいという結論には至りません。

二酸化炭素を削減するために地球環境を破壊する矛盾が起こるのです。

そんな中、EUは2035年まで全ての新車をEV(電気自動車)にシフトする方針を示しています。EUを脱退したイギリスに至っては2030年までに販売する全ての新車をEV(電気自動車)にシフトするとしています。(※2023年9月20日、イギリスのスナク首相は2030年にガソリン車とディーゼル車の販売を禁止するという政策を5年延期し、2035年からにすると発表しました。)

EUもイギリスもトヨタ車の販売を禁止したい思惑をカーボンニュートラルを隠れ蓑として政治的に推進しようとしてきました。トヨタのハイブリッド車技術に敵わないヨーロッパ自動車メーカーを保護するための施策だったのですが、トヨタの封じ込めを画策している中で中国の自動車メーカーが安価に販売するEV(電気自動車)に中国国内市場だけなく、ヨーロッパ域内でもヨーロッパ車のシェアが大きく奪われてしまったのです。

そうした状況の中でドイツやイタリアの自動車メーカーからはエンジン車の販売を認めるように訴える声が上がっています。

EV(電気自動車)の海上輸送

リチウムイオン電池の火災や爆発事故が後を経ちません。2023年7月にもオランダ沖では約4,000台弱の車のうち約500台EV(電気自動車)を積んだ海上運搬船が1週間も燃え続ける大規模な火災が発生しました。EV(電気自動車)から出火したと見れれており、国連の下部組織である「世界海運機関」は「オランダ沖での大規模火災と同様な事故が最近多発してしるため、EV(電気自動車)の船舶輸送に関する規制を強化する検討をしている」と発表しました。

EV(電気自動車)で中国自動車メーカーの一人勝ちが見え、更に、海上輸送の危険性からEUは2035年までのEV(電気自動車)シフトへの方針を維持できない可能性が高まっています。

トヨタが開発している「全固体電池」はリチウムイオン電池が発火する危険性もなくす、大きなメリットがあります。ただ、量産化にむけて従来型のバッテリーの4倍から25倍割高となる製造コストが課題となり、普及までは時間がかかると見込まれます。

EV(電気自動車)も選択肢のひとつとして生き残っていくでしょうが、全ての自動車がEV(電気自動車)となる世界は来ないのかもしれません。

 

 

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