人工的に培養した脳細胞と、コンピューターを融合させたチップで全く新しい人工知能を作ろうと挑んでいる研究者がいます。
研究者が目指す究極目標の1つに、「AGI(汎用人工知能)」と呼ばれるものがあります。人間の知能とほぼ同等レベルのAIといった具体に定義されています。
※AGI=Artificial General Intelligenceの略
会話についても人間と同じようなスピード感で言葉のやり取りができ、途中で遮ったとしても状況や前後の文脈、雰囲気などを理解した上で会話を継続できます。
多くの企業や研究者達がAGIを開発しようとする表層的な目的としては次のように述べれられています。
- 複雑な社会課題の解決 現代社会は複雑化・多様化しており、AGIはこれらの課題に対して革新的なソリューションを提供できる可能性があると期待されています。
- 労働力不足への対応 少子高齢化による労働人口の減少や「2025年の崖」、「2040年問題」といった労働力不足の課題解決が期待されています。
- 科学技術の飛躍的進歩 AGIは複雑な問題を解決し、新しい理論を提案することで、医療、エネルギー、環境など様々な分野での革新的な発見や技術開発を加速させる可能性があると期待されています。
- 効率化と生産性向上 AGIは人間の能力を補完し、より創造的で高度な仕事に集中できるようサポートすることで、生産性を向上させることが期待されています。
- 個別化・最適化されたサービス提供 医療や教育など様々な分野で、個々のニーズに合わせたカスタマイズされたサービスを提供することが可能になると期待されています。
- 人類の知的能力の拡張 AGIは人間の知的活動を補完し、より高度な問題解決や創造的な活動を可能にすることで、人類全体の知的能力を拡張する可能性があります。
軍事目的や私利私欲のためにAGIを利用しようと画策している輩も多いのかもしれまん。AGI実現には技術的・倫理的な課題も多く、慎重な開発と議論が必要とされています。
次のような研究は、人工知能と脳科学の融合による新たな可能性を切り開こうとしています。
生物学的なニューロンを情報処理に利用するバイオコンピューターの開発は、従来のAIとは異なるアプローチで、より効率的で高度な人工知能の実現を目指しています。
目次
Brainowareプロジェクト
米国インディアナ大学ブルーミントン校の研究者らは、「Brainoware」と呼ばれる生きたAIハードウェアを開発しています。
- 実験室で育てた人間の脳細胞をコンピューターに接続
- 多電極アレイを使用して情報を送受信
- エノン写像(非線形方程式)の解決に成功
- 従来の人工ニューラルネットワーク(ANN)モデルを上回る性能を示した
DishBrainシステム
オーストラリアのCortical Labs社の最高科学責任者であるブレット・ケイガン博士らの研究チームが開発した革新的な生物学的人工知能システムが「DishBrainシステム」です。
主な特徴は次の通りで脳のメカニズム解明や新たな人工知能技術の開発に貢献する可能性があると注目を集めています。
- ヒトのiPS細胞から作成された細胞の塊を、多数の微小電極上で培養して作られています
- 脳と機械が相互作用できるように設計されており、脳細胞同士が刺激を送受信できます
- 驚くべきことに、このシステムは卓球ゲーム「PONG」の1人用モードをわずか5分で学習することができました。これは現行のAIが同じ学習に90分かかるのと比較して非常に速いです。
- DishBrainシステムは電気信号を通じてゲーム情報を受け取り、パドルを操作してボールを打ち返す方法を学習します
Ihm Curious
イーロン・マスクのニューラリンク
ーロン・マスクらが2016年に共同設立したベンチャー「Neuralink Corporation社(ニューラリンク)」が人間の脳にチップを移植するBMIと呼ばれる脳と電子デバイスを結びつける技術を活用し、人間の脳にも埋め込めるプロダクトを発表し、認可されれば半年後には実際に人の脳に埋め込めるようになります。
- 目的: 脳神経の動きを記録・送信し、思考でデバイスを操作する
- 対象: 手足が麻痺した患者などのコミュニケーション支援
- 期待: 脊髄損傷やALSなどの難病治療への応用
東京大学Beyond AI研究推進機構
池内与志穂准教授らのチームは、ヒトiPS細胞から人工的な脳組織を作る研究を行っています。
- コネクトイド: 脳オルガノイド(人工的な脳組織)をつなぎ合わせた神経回路組織
- 目標: 人工脳に機能を持たせ、高次機能を実現すること
- 特徴: 従来の脳オルガノイドよりも活発で複雑な活動を示し、外部刺激に反応する